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説明のない方針転換が、社員の信頼を失う理由 ー 尊敬していた上司の経験から考える

「大きな方針転換があったのに、現場への説明がない」
「以前言っていたことが、いつの間にか、なかったことになっている」

社内で、そんな戸惑いの声を感じたことはないでしょうか。

事業環境の変化が激しい今、方針転換や撤退は経営に必要な判断です。
問題は、変えること自体ではなく、変えるときの「伝え方」にあります。

私自身、過去にそのことを痛感した経験があります。

1. 尊敬していた上司への信頼が揺らいだ、二度の方針転換

以前所属していた組織で、私には尊敬していた上司がいました。
能力が高く、判断も早く、周囲からの信頼も厚い方でした。

ところが、大きな方針転換が二度続き、現場に十分な説明がありませんでした。
「なぜ変わったのか」「以前の方針はどうなるのか」が分からないまま、
私たちは新しい方針に合わせて動くことになりました。

一度なら「何か事情があったのだろう」と受け止められます。
しかし二度重なると、
「次もまた変わるのではないか」
「この方針も、またすぐ変わってしまうのでは」
という気持ちが、少しずつ広がっていきました。

そればかりか、「この組織で私はモチベーション高くやっていけるのだろうか」
と不安を覚えてしまいました。

そのとき、私が学んだことがあります。

どんなに能力が高く、素晴らしい上司でも、
説明のない方針転換が重なると、信頼は静かに失われていく
ということです。
またその方の立場が高いほど、失われる組織へのエンゲージメントも同時に大きくなるということです。

方針転換は「約束の変更」でもあります。
以前に語った方向性を変えるのですから、
変わるときこそ、自分から先に、理由とともに伝えることが信頼を守る行動になります。

説明がないまま方針転換が続くと、職場では次のような変化が起きやすくなります。

– 「どうせまた変わる」という諦めから、新しい取り組みへの本気度が下がる
– 判断の背景が分からず、現場が自分で考えて動きにくくなる
– 安心して意見を言えなくなり、優秀な人ほど静かに距離を置き始める

2. 説明できないのは、能力や誠意の問題ではありません

私がお会いしてきた経営者やリーダーは、決して不誠実な方ではありません。
むしろ、責任感の強い方ばかりです。

説明が後回しになる背景には、たとえば次のような思いがあります。

– 「社員を不安にさせたくない」という配慮
– 「確定してから伝えたい」という責任感
– 「以前と言っていることが違う」と受け取られることへのためらい
– 相談できる相手がおらず、判断を一人で抱え込んでいる状況

どれも、会社と社員を思うからこそ生まれる気持ちです。
ただ、その配慮が、受け取る側には「何も知らされていない」という不安
として届いてしまうことがあります。
立場上、誰にでも起こり得ることだと私は感じています。

3. エグゼクティブコーチングでは、何が起きるのか

こうした「伝えたいのに、うまく伝えられない」状態は、一人で抱えていると見えにくいものです。
社外で利害関係のない相手と対話することは、有効な選択肢のひとつです。

エグゼクティブコーチングでは、答えを教えるのではなく、
問いを通して経営者ご自身の考えを整理していきます。

たとえば、次のような問いを投げかけます。

「その説明を先送りにしたとき、何を守ろうとしていましたか?」

「社員の方は、何を一番知りたいと思っているでしょうか?」

「いま決まっていることと、決まっていないことを分けると、どうなりますか?」

評価されない安全な場で、迷いや葛藤をそのまま言葉にしていくと、
「本当は何を大切にして決断したのか」が見えてきます。
その軸が整理されると、社員の方に伝える言葉も自然と定まっていきます。

4. 今日から使える「説明の5点セット」

方針を変えるときは、次の5点をセットで伝えてみてください。

1. 何を決めたか(変更の内容)
2. なぜそう決めたか(背景と理由)
3. まだ決まっていないこと(分かっていない点も正直に)
4. 現場にどんな影響があるか(誰の何が変わるのか)
5. 次にいつ、情報を出すか(続報の約束)

特に3つ目の「まだ決まっていないことを正直に伝える」は、
完璧でいなければと感じている方ほど、勇気のいる部分かもしれません。
けれども、迷いも含めて共有することが、社員の安心につながります。
そして5つ目の「次にいつ伝えるか」は、小さな約束を守る行動そのものです。

ただ、いきなり5点セットをはじめるには少し無理があるかもしれません。
まずは、次の3ステップから始めてみませんか。

1. 最近の指示や変更で、「説明が足りなかったかもしれない」と思う出来事を、ノートに1つだけ書き出す
2. 「なぜそのとき、丁寧に説明できなかったのか」を、責めずに眺めてみる
3. 次の変更から、5点セットで伝えてみる

まとめ

変えること自体は、悪いことではありません。
信頼を左右するのは、変えるときに「理由」と「次の約束」を添えられるかどうかです。

自分の考えや判断のクセを一度整理したいと感じたときは、
外部の対話の場を使うことも、ひとつの方法です。

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