その「DEI」、何のため?──企業に問われる覚悟と戦略

トランプ前大統領の影響により、アメリカでは“反DEI”の動きが加速しています。
こうした潮流は、日本にもじわじわと影響を及ぼしており、
「うちも見直すべきなのか」と迷い始めている企業もあるかもしれません。
しかし、5月2日の日経新聞に掲載された
ワーク・ライフバランス社の小室淑恵さんのコメントは、その迷いに一石を投じるものでした。
小室さんは、DEIは日本の少子高齢化時代における人材獲得戦略であり、
本質は「働き方改革」にあると指摘しています。
長時間労働を前提とした評価や昇進の仕組みや全体的な業務を見直し、
AIなど使えるものを駆使しつつ、限られた時間内で人材を最大限に活かす経営へとシフトすることで、
男女問わず多様な人材がどんなポジションでも働きやすく、活躍できる環境づくり
――それが、これからの日本社会で企業が生き残る道だというのです。
つまり、DEIを「流行だからやる」ものとして捉えるのではなく、
時代の必然として、自社にとってどう意味づけるのかを真剣に考える必要があります。
大事なのは、周囲の空気に左右されることではなく、
『自社にとって「DEI」とは何か』を明確にしておくこと。
「なぜ取り組むのか」が社内で共有されていなければ、
外からの批判や風潮に振り回され、方針がブレやすくなります。
逆に、それが明確であれば、外的な風向きがどうであれ、ぶれずに推進できます。
たとえば、DEIに取り組む目的としては、企業によって次のような観点があり得ます:
<優秀な人材の確保と定着>
多様な働き方を支援し、誰もが活躍できる環境を整備することで、
今後ますます貴重になる労働力を確保する。
<イノベーションの創出>
異なる視点を持つ人材が交わることで、
より柔軟で創造的な商品開発や意思決定が可能になる。
<ブランド価値と信頼の向上>
社会課題に真正面から向き合い、持続可能な経営を志向する姿勢が
顧客や投資家、社会全体からの信頼につながる。
<エンゲージメントの強化と離職率の低下>
誰もが活躍できる包括的な企業文化が従業員の安心感を生み、
組織への帰属意識やエンゲージメントを高める。
これらのうち、自社はどこに重きを置くのか。
どれを起点にして今後の人事制度や経営戦略を描くのか。
その軸があるかどうかが、これからの不安定な時代を乗り越える力になります。
トレンドとしてのDEIに流されるのではなく、「なぜ取り組むのか」を自分たちの言葉で定義する。
その覚悟と戦略が、これからの企業経営には問われています。
あなたの会社は「なぜDEIに取り組むのか」を当社と一緒に考えませんか?