どうして日本企業で1on1が機能しないのか
私がコーチングの勉強を始めた2021年ごろから、社内の心理的安全性を高める施策の1つとして、
「1on1が有効」との情報が広まりました。
楽天やYahoo Japanなどの大手企業は、いち早く社内での1on1を開始し、それがたちまち話題になりました。
他の企業もそれに追随したのですが、なかなかうまく機能せず、形だけの1on1になっていました。
どうしてうまく機能しないのでしょう?
基本的に、1on1は上司側にコーチングスキルが必要になりますが、
日本ではコーチングがあまりメジャーではなかったことで、
1on1を実施しても、評価面談のようになり、
上司側が延々と話し続けるような、部下にとってはただの苦痛の時間でしかないことが多いのだと思われます。
日本で1on1が機能しないのにはいくつかの原因が考えられますが、
前述したように、上司(聞き手)側のコーチングスキル不足も要因の1つではありますが、
部下が本音を話すためのラポール(上司部下相互の信頼関係)形成不足が大きな要因だと私は思います。
部下とのラポールを築くためには、上司からの『心の歩み寄り』が必要です。
「上から」ではなく、「横から」の歩み寄りです。
部下と対等の立場で話を聴くことが大切です。
そのための有効な方法として、私は『自己開示』を勧めます。
それもどちらかといえば、成功事例ではなく、失敗談をお話しするのがよいです。
成功事例だとついティーチングやお説教的な関わりになりがちです。
それに対して、失敗談を話せば、部下は上司も自分のような失敗経験もあったんだと感じ、
上司をより身近に感じることになります。
上司としてのメンツとか立場を考えると、
なかなか自ら失敗談を部下に話しづらいと感じるかもしれませんが、
そこは部下との信頼関係を築くためにと割り切って話してみてください。
上司がありのままの姿を示すことが、部下の心の扉を開くきっかけとなるはずです。
もちろん、一度失敗談を話せばすぐに関係がよくなるわけではありません。
そこは根気強く、少しずつ時間をかけて歩み寄りを続けることで、ようやくラポールが形成されます。
ラポールが形成された関係では、
言いやすいことはもちろん、言いにくいことも以前よりは伝わりやすく、
良い悪い関係なく、部下も上司からの言葉をしっかりと受け止められるようになるのです。
マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授の提唱する「組織の成功循環モデル」が
まさにこのことを示しています。
成果を出す組織は、まずは「関係の質」がよくなり、次に「思考の質」が高められ、
「行動の質」が良くなり、最終的には「結果の質」が上がるというものです。
良い組織を作りたいと思ったら、まずは上司から部下への歩み寄りが必要だということをご理解いただけたでしょうか?