阪神・岡田監督に学ぶ、チームマネジメントで結果を出す方法
2023年9月14日、18年ぶりにわが阪神タイガースがセ・リーグ優勝しました!
阪神球団史上最速の優勝。
それは他でもない、岡田彰布監督就任でもたらされた結果。
今回は、物心着いた時から阪神ファンの私が、
その岡田采配に見るチームマネジメントで結果を出す方法について考えてみたいと思います。
岡田采配の優れている点
岡田采配はいくつも語られていますが、
その中で私が「これが素晴らしい!」と感じた3点について、まとめました。
問題解決力
阪神の優勝が見えてきた時期から、岡田采配の素晴らしさはいくつも語られていますが、
私が最大のポイントと思う点がマネジメントで言う「問題解決力」、
つまりどこが問題で勝てないのかを見抜き、その対策(解決)をしたことでした。
今年の阪神において岡田監督がまず実行したのは、「攻守における欠点の返上」です。
攻撃面においては「フォアボールの査定変更」でした。
選手がフォアボールを選んだ時の査定ポイントを上げてもらうよう、
シーズン前に球団にOKをもらい、選手に伝えたのが功を奏したのです。
今年の阪神の主要選手に3割バッターは1人もいません。
そして、前年も同様でした。
つまり、そんなに打線は去年から大きく変わっていないわけです。
岡田監督は、前年までのタイガース選手の打撃をよく見ていて、
初球のボール球からブンブンとバットを振り、
ボテゴロになったり、フライであっけなくアウトになる。
「なぜそんなにボール球を振るんや?」と感じたそうです。
息子2人が野球をしていたので私にもわかります。
岡田監督が言うことは、とても基本的なことなんです。
「ボール球を振るな!」は、少年野球でも教えられることです。
ボール球を振ることで、打撃フォームは崩れて、たとえバットに当たったとしてもボールの芯をとらえることはできません。
要は、ヒットになりづらいわけです。
フォアボールの査定(評価)を変えることで、
選手は無駄にバットを振るより、ボールを見極めてフォアボールを選ぶか、
ストライクを打ってヒットを打ち、塁に出ることが勝つためにいかに大切かを理解するようになりました。
阪神選手の打撃は大きく変わらなくても、フォアボールを選んだ数は両リーグ通じてダントツ1位でした。
それが今年の阪神タイガースの得点数を大きく伸ばし、勝利につながった大きな要因でした。
つまり、そんなに打てないチームを、フォアボールを選んで出塁することでカバーし、そして勝利につなげたということ。
まさに、欠点をカバーするだけでなく、圧倒的な成果を生み出したのです。
守備面では、ダブルプレーの徹底です。
岡田監督は、前年までの阪神の試合では、ダブルプレーを取る場面で、
セカンドではアウトにできても、ファーストでアウトを取れず、
それが原因で失点につながっているケースが多いことに気づきました。
そのため、ダブルプレーの練習をシーズン前に徹底的に行った結果、
今シーズンでは、ダブルプレーの成功率、併殺奪取率は2022年の58.7%から
2023年は69.4%と格段に上がりました(9月10日時点)。
この攻守におけるチームの問題点を見抜き、その対策をシーズン前から準備する
という、いわば「問題解決力」がとても優れている点が、
今年の阪神優勝における最大のポイントと思います。
チームの成果を出すには、リーダー自身が動くのではなく、
メンバーに動いてもらって結果を出さなくてはなりません。
チームのどこが問題でうまくいかないのかを見抜くこと。
そして見抜いた場合、問題を解決するための方法だけでなく、
さらに成果につながる方法を実行できたならば、あなたは素晴らしいリーダーになれるというわけです。
コミュニケーション力
岡田采配の次に挙げられるのは、コミュニケーション力です。
岡田監督は、現在65歳です。
現在の阪神選手にはZ世代も多く、3回り以上歳が離れている選手もいます。
どんなチーム運営においても、リーダーにはメンバーとの円滑なコミュニケーションが必須です。
ただ、岡田監督は2013年にオリックスの監督を退いてからは、野球評論家として活躍されており、
リーダーとしてのコミュニケーション能力というものがそこまで長けていたとは言えません。
感情的になってズバズバ本音を言いすぎて、相手との関係を悪くしてしまう。
これまでの岡田監督のコミュニケーションにおける欠点と言える部分です。
では、そこをどうカバーし、世代や価値観も全く異なる若い選手たちとの信頼関係を作り上げたのか?
岡田監督は、実によく選手たちの練習を観察しています。
自身の選手として、監督として、解説者としての経験などから、
選手の欠点やどこをどう変えればもっとよくなるという点はすぐに見抜いたのでしょう。
それを、ただでさえ歳が離れていてコミュニケーションが難しい若い選手たちに
直接伝えることはせず、試合後のインタビューやコーチを通して
いわば間接的に伝える、それが岡田流コミュニケーションでした。
選手たちは、メディアやコーチを通して、監督の考えや思いを知ります。
そこから自分なりに考え、監督の方針を理解して行動するようになりました。
監督の言われるように行動すれば、実際に結果が出ることを理解しました。
そして、監督への信頼感を増して行ったのだと思います。
もちろん直接のコミュニケーションも信頼感の増加と共に増えていったとは思います。
それが、フォアボール最多、そしてチームの勝利、そして優勝という大きな成果につながったと言うわけです。
自分のコミュニケーション能力の欠点を知り、
それをメディアやより選手に近いコーチなどから伝えることで
カバーし、最大限の効果を生む。
それが岡田流コミュニケーションでした。
コミュニケーション能力は、一人ひとり違います。
どんなリーダーも得意な部分もあれば、不得意な部分があります。
自分自身でそこを理解し、どうすればよりうまくコミュニケーション力として発揮できるか、
考えて実践することで、リーダーシップをうまく発揮することができるのです。
育成力
今年の阪神の選手層に、大きな改造はありませんでした。
外国人の助っ人も1人だけ。
岡田監督は、今いる人財を最大限活かし、成長させました。
一人ひとりの能力を見極め、それが最大限に発揮できる守備の固定や
選手の力を信じて、1年を通じて打撃順をほぼ固定しました。
そうすることにより、自分の役割に専念させ、
自身の持つ能力を最大限に発揮してもらえるような環境をつくりました。
ファインプレーやビッグプレーなど特別なことはいらない。
普通にやるだけ。
そんな堅実なプレーを求めました。
監督の一貫したメッセージが次第に選手に浸透し、
最初は自分1人のプレーでの点だったものが線としてつながり、
チームワークやチームの勝利につながりました。
だからこそ、岡田監督が就任して1年目の優勝があるんだと思います。
岡田監督自身も選手の成長を感じて、そう語っています。
「大したもんと思うよ。おーん。これは地道にな、俺が監督に代わってやることというか、そういうものの積み重ねで、勝ち星を重ねたから。ふだんどおり“普通”にやればいい結果が出るという、そういう平常心というかな。自分らの野球をしたら(勝てる)というのが何か見えるよな、おーん」
おわりに
息子2人が野球を習っていたのでわかるのですが、
岡田監督が言っていることは「何も特別なことではない」のです。
少年野球でも言われるようなあくまでも単純で基本的なことを、プロ野球選手に伝えているわけです。
リーダーの『言葉の力』もあると思います。
就任して1年の岡田監督ですが、
一貫して同じことを言い続けたことが次第に選手達にも伝わり、
それが18年ぶりの「優勝」と言う形に結びついたんだと思います。
何より、監督が言い始めた「優勝」の意味の『アレ(A.R.E)』。
今や日本中の人が知っていると思いますが、
選手たちが優勝を意識しすぎて、いつも通りのプレーができなくなることを心配しての岡田監督の配慮の賜物なのです。
リーダーの発する言葉って重いし、響くんですよね。
だからこそ、一貫して同じことを繰り返し言い続ける必要があります。
『アレ』の次なる言葉に全国の阪神ファンの思いも載せて、今年は38年ぶりの『日本一』まで駆け抜けてほしいものです。
今回だけは、阪神への思いもたっぷり込めながら書きました…。