テレワークを阻むハンコ文化。脱ハンコの本当の意味とは?婚姻届もオンライン化!?
緊急事態宣言下のテレワーク真っただ中から盛り上がった「ハンコ廃止」論争が、ここに来て再燃しています。
というのも、2020年4月に全国一斉に発出された緊急事態宣言から一気に広がったテレワークですが、あれから半年余りが過ぎても、テレワークを阻む「ハンコ文化」については、官公庁をはじめ多くの企業で依然として行われています。
それに対し、新・河野行政改革担当大臣(以下、河野行革相)が「脱ハンコ宣言」をしたことがきっかけで、一気に「脱ハンコ」が進むのではないかと期待されています。実際、本日も法務省関連の婚姻届・離婚届などの手続き44種のうち、35種は押印廃止、いわゆるオンライン化の検討をしていることが発表されました。
ここでは、日本のハンコ文化とはどういうものかを知りつつも、なぜ今「脱ハンコ」が必要なのか、代わりのサービスはどんなものがあるのか、まとめました。
本来の「ハンコ」文化とは?
欧米人から『クール!』と人気のハンコ(印章)ですが、元々の発祥は、なんと紀元前7千年以上前のメソポタミア文明でした。私もこれを調べるまで知りませんでした!そして、それがキリスト教と共にヨーロッパに広がり、シルクロードを経て中国へ。そしてそれが中国から日本へと渡ってきました。
日本へは日本史で習いましたよね?西暦57年頃に、中国から当時の日本へ渡されたという『漢委奴国王印(かんのわのなのこくおういん)』が、日本最古のハンコと言われています。
それから時を経て、日本独自の「ハンコ文化」へと発展していきました。現在の印鑑制度の原型となる「印鑑登録」を制定したのは明治政府でしたが、この時代は国民全員が文字を書けたわけではありません。自筆で署名できない場合でも、印鑑登録済みの実印さえあれば本人の証明ができるようになったため、一般市民にもハンコが普及しました。
現在は「ハンコ(印章)」=「印鑑」と思われていますが、実は「印鑑」とは印鑑登録に用いられた押印の印影(あと)のことを本来は指すのですが、あまりにも「ハンコ」=「印鑑」が世間一般に定着してしまい、今ではほぼ同じ意味で使われています。
現代日本で生活・実用品として用いられるハンコは、市町村に登録した実印、銀行などの金融機関に登録された銀行印、届け出を必要としない認印の3種類があります。
「脱ハンコ」の必要性と実現の可能性は?
そして今年。新型コロナ対策により、テレワークが一気に広がり、それに伴い「脱ハンコ」が叫ばれるようになりました。なぜならご承知の通り、せっかくのテレワークなのに「ハンコ」を押すためだけに出社しなければいけないという矛盾が多く発生したからです。
テレワークを行うためには、「ハンコ文化」をやめるだけでなく、同時に紙の書類もなくす必要があります。そのためには、電子認証システムなどの導入など、ハンコとは別の方法での承認や情報共有の仕組みなど、ITインフラの環境整備が不可欠です。そして、自社だけが行ってもこの動きは拡大・浸透しません。
これまでに何度も「脱ハンコ」が取り上げられては、日本で定着せずに来た理由は、日本独特の産業構造にあります。日本企業の9割以上を占めるのは中小企業だからです。大企業でいくら「脱ハンコ」を進めても、従業員数が少ない中小企業としては、ITインフラへの投資はあまりメリットのない大きな投資につながるのです。
テレワークで生産性を上げ、日本経済の活性化に必要な「脱ハンコ」ですが、その背景にある中小企業への対策も含めて取り組まなければ、また過去と同じようになかなか進まないことになることでしょう。
まとめ
「脱ハンコ」はこれからの日本経済を左右する大事な決断です。政府や地方自治体から先導して始めることは、この動きを加速する上で非常に有効ですが、その陰には日本経済を下支えする中小企業の存在を忘れないでください。
ぜひとも「脱ハンコ」にあわせて、中小企業への対策や補助事業などの検討が必要なことも忘れないでください。ただ、経済活動への「ハンコ」はなくなっても、芸術面や宅配便を受け取る際などの「ハンコ」は有用で、日本独自の「ハンコ文化」の存続も大切だと思います。
これからの女性の活躍にはテレワークなど多様な働き方が必要なのです。河野行革相、頑張ってください!期待しています!