信頼関係が先、ルールは後―心理的安全性の高い職場のつくり方

企業でのハラスメント研修が盛んに行われるようになりました。
パワハラ防止法の施行以降、多くの組織が「やってはいけないこと」を学ぶ機会を設けています。
もちろん、ハラスメントにあたる言動を知り、それを避けることは重要です。
しかし、私たちは本当に大切なことを見落としていないでしょうか。
ハラスメント研修の多くは「これを言ってはいけない」「こんな行動はNG」
というルールやチェックリスト的なアプローチです。
確かにこれは必要な知識ですが、表面的なルールだけを守っても、
職場の関係性は豊かになりません。
むしろ、「何を言っても問題になるのでは」と萎縮し、
コミュニケーションそのものが減ってしまうケースも見られます。
本当に心理的安全性の高い職場をつくるために必要なのは、日頃からの信頼関係の構築です。
信頼関係があれば、多少厳しいフィードバックも
「自分のことを思って言ってくれている」と受け止められます。
逆に信頼がない状態では、どんなに言葉を選んでも、
相手は不信感や恐怖を感じてしまうものです。
ハラスメントかどうかの境界線は、実は「何を言ったか」以上に
「誰が誰に、どんな関係性の中で言ったか」に大きく影響されるのです。
信頼関係を築く有効な手段として、『1on1ミーティング』があります。
定期的に上司と部下が向き合い、業務の話だけでなく、
キャリアや悩みについて対話する時間は、お互いを理解し信頼を深める絶好の機会です。
「なんだ。それならすでにうちでもやっているよ」という声があるかもしれません。
しかし、日本の職場文化では1on1の導入がうまくいきづらい現実があります。
「本音を言いにくい」
「何を話せばいいかわからない」
「形式的な面談になってしまう」
といった声をよく耳にします。
上下関係を重んじる文化や、感情を表に出さないコミュニケーションスタイルが、
本来なら信頼関係構築に有効な1on1の効果を妨げているのです。
だからこそ、私たち株式会社アズイズでは、
日本の組織文化を理解した上での1on1導入支援による組織文化醸成を行っています。
単なる手法の紹介ではなく、心理的安全性を高めるための土台づくりから、
管理職のコーチングスキル向上、従業員一人ひとりの自己理解を深めるサポートまで、
組織の「As-Is(現状)」をしっかり把握した上で、「To-Be(理想の状態)」への道筋を一緒に描きます。
ハラスメント研修というルールは、あくまでも「最低限守るべきライン」を学ぶもの。
本当に目指すべきは、そのラインを意識しなくても、自然と相手を大切にできる信頼関係です。
「やってはいけないこと」を学ぶ前に、まずは「この人と一緒に働きたい」と思える信頼関係を築くこと。
それが、真に健全で生産的な職場をつくる第一歩なのではないでしょうか。


