人的資本の情報開示は大企業だけの話じゃない――中小企業こそ今始めるべき理由

「人的資本の情報開示」と聞くと、どこか大企業だけの話のように感じる方もいるかもしれません。
ですが最近では、中堅・中小企業にとっても、”人への投資”を見える化し、
社内外へ伝えていくことの価値がますます見直されています。
■ 実は6割の中小企業がまだ「知らない」という現実
2025年に実施された中小企業を対象とした調査によると、
人的資本経営について「聞いたことはあるが、よく知らない(30.9%)」「知らない(31.7%)」と、
約6割以上の中小企業経営者がまだ十分に認知できていないという結果が出ています。
さらに「取り組めていない」企業も6割以上にのぼることがわかっています。
一方で、制度は着実に進んでいます。
2023年3月期より、有価証券報告書を発行する大手上場企業(約4,000社)を対象に人的資本の情報開示がすでに義務化されており、2026年3月期からはさらに開示内容が拡充されました。
具体的には、「経営戦略と人材戦略の連動」「従業員の給与・報酬の決定方針」「人材育成・社内環境整備の方針とその成果」などが新たに求められるようになっています。
加えて、人的資本開示の国際基準であるISO 30414も2025年に改訂され、従来の58指標から69指標へと拡充。
うち14指標が「必須(Requirement)」として位置づけられました。
グローバルな視点でも、人的資本の情報開示はより具体性・実効性を求める方向へと進化しています。
さらに現在、ISO 30414(開示の指標)に続く新たな規格として、
「ISO 30201(人材マネジメントシステム)」の2026年内の正式発行が予定されています。
これはPDCAサイクルに基づいて人材マネジメントを体系的に運用・改善するための認証規格であり、
ISO 9001(品質)やISO 14001(環境)と同様に**「認証取得が可能なマネジメントシステム規格」**として設計されています。
「開示する」だけでなく「仕組みとして回す」という次のステージに向けて、
今から準備を始める企業が先行者利益を得ることになりそうです。
■ 大企業だけの話ではない理由
大企業や先進的な企業では、人的資本の情報開示が少しずつ浸透してきています。
企業価値の向上や採用活動へのプラス効果を狙った動きと捉えられがちですが、
実はそれ以上の”副次的な効用”も見逃せません。
たとえば、ある程度のデータを開示し始めると、その継続性が求められるようになります。
過去に好調だった数値が悪化した場合、「今回は開示を見送ります」とするわけにはいきません。
もし突然、以前まで公開していた情報を出さなくなったら、
「何かあったのでは?」と勘ぐられてしまい、投資家や求職者に不信感を与える可能性もあります。
だからこそ、たとえ数値が思わしくない時であっても開示を続ける必要がありますし、
加えて改善に向けた取り組みを示すことも求められます。
これは、企業にとって「組織の状態を自ら点検し、
改善するためのアラート」の役割を果たしているとも言えます。
開示によって”誤魔化せない状況”を自らつくることで、結果的に組織の健全性が保たれていくのです。
■ 「ありのままの姿」を発信することの力
そもそも、完璧な企業なんて存在しません。
良いところもあれば、課題もあるのが当然です。
だからこそ、良いデータも、改善が必要なデータも含めて開示していくことが、
組織の「ありのままの姿」を社会に伝えることにつながります。
取り繕った姿に惹かれて入社した人が、現実とのギャップに失望してすぐに辞めてしまう。
そうしたミスマッチを減らすためにも、等身大の企業像を発信していくことが、
これからの時代にはますます重要になっていくのではないでしょうか。
■ まず「知る」ことから始めてみませんか
制度の義務化は現時点では上場企業が中心ですが、
取引先や金融機関、求職者からの目線はすでに変わり始めています。
中堅・中小企業にとっても、「いつかやること」ではなく、
「今から準備しておくこと」として捉え直す時期に来ているのかもしれません。
当社では、ISO 30414の考え方に基づき、人的資本の情報開示や指標設定、開示後の改善施策のサポートも行っています。
情報開示を「作業」として終わらせず、自社の成長につなげる取り組みにご関心のある企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。


